ぼくが出版社を(ついでに本屋も)始めてしまった理由

実はうちの会社、(株)STUDIO RICEはこのたび「出版社」になりました。

……っていうと、すごくかっこいいんですけどね。
ぜんっぜん、大したことはしてません。
実際にやったことといえば、自社で本が出版できるように「出版者登録」を行っただけです。

市販されている本の裏側を見ると、2段のバーコードがついてますよね。
あれは「ISBNコード」と呼ばれていて、書店で本を流通させるために必要なものです。
このISBNコードは「日本図書コード管理センター」というところが管理しています。こちらに申請をして認められれば「出版者」として登録することができ、自分専用のコードがもらえます。(個人でも取れるので「社」ではなく「者」)

そのコードを取りました。うちの会社も晴れて出版者です。ちなみに今年の6月半ばに思い立ち、およそ2ヶ月ほどで準備しました。

なんで、わざわざ「出版社」にしたのか?
それにはいくつかの理由がありますが、一番大きな理由は……

本の内容を完全に自分でコントロールしたい

商業出版をしたことのある人、つまり本屋さんで販売されている本を書かれた経験のある人は、意外と多いです。

特に、ご自身でビジネスをしている人が、権威づけや知名度アップ、ひいては集客を目的にして本を出す、というケースはとても多くあります。

ですが、結果から言うとこれがなかなかうまくいきません。
特に自費出版の場合は印刷費用を何百万も負担するようなケースがあるにもかかわらず、です。

これはどういうことでしょうか?

結論から言うと「著者がお客さんに伝えたい内容と出版社が出したい本は違う」ということです。

一般的な出版社の場合、本が売れることが目的です。
そのためには、本を「お客さんの手に取ってもらえる内容」にする必要があります。

しかし、この内容が著者本人が伝えたいこととずれていたとしたら、出版社と著者のミスマッチが起こります。

たとえばですが、ぼくは自分の開催する講座に興味を持ってくれたら嬉しいという気持ちがあるので、その入り口として、自分の本を活用しています。やさしい内容の入門書的な本ならその目的を果たしやすそうです。今出ている「がんばらなくても自然に売れる文章のルール」は、まさにそんな内容の本にしています。

仮に、この本をよその出版社から発行することになったとしましょう。すると当然その出版社の編集担当さんがついて、アドバイスを行います。
それが望むべき改編であれば良いのですが、「こういう内容にした方が本がたくさん売れるから」みたいな理由で、本の内容を「街で見かけた面白広告コピー100選」とかに変えられてしまったら、ぼくの目論見、すなわちぼくのコンテンツに興味を持ってもらい、受講生を獲得するための道がとても難しくなってしまいます。

出版社は本が売れることが目的なので、こうしたことは程度の大小はあれよく起こります。
ビジネス目的で出版した著者の多くが実態としてあまり本を活用できていない背景には、こんな事情があったりします。

ぼくが自分で出版社まで作ってしまったのには、この辺をなんとかして、上流からコントロールしたいという気持ちが強かったことが大きな理由のひとつです。

ぼく、実はこの2年くらいでひっそりと、自分の本の他にも10冊ぐらいのビジネス本(多くは100〜120ページ程度の小冊子)のプロデュースをやらせてもらっています。幸いこれまでも本の内容に関しては自由にやらせてもらえていました。ですが、もっと踏み込んで内容までイチから責任を持てた方が、全体的なビジネスの形をよりはっきりと組み立てやすいです。

極端な話、本は採算度外視で販売してしまい、そのほかの部門で儲けるような戦略だって取ることができます。(実際そうするかどうかは別として)

こうなってくると、もうひとつやりたいことが出てしまいました……
それは、「本の販売まで自力でやる」です。

本を買ってくれた人と、直接やりとりがしてみたい

弊社、(株)STUDIO RICEは出版者登録をしていますから、その気になれば全国への書店流通もできるのですが、実は全国の書店に本を流通させる「取次」への登録は非常にハードルが高い上、仮に登録できたとしても新規の出版社に対する取引条件は大変厳しいものです。
それを乗り越えて無名の出版社から無名の著者が本を出したところで、書店からの注文はまず入りません。

さらに、お客さん目線から言っても、今どき書店でわざわざ取り寄せの手続きをするぐらいならネットでポチりますよね。ぼくならそうします。

弱小出版社にとって、書店売りははっきり言えば「労多くして実りなし」です。

そこで活躍するのはAmazonです。
実際これまでに出版した本はすべてAmazonで販売していましたし、たいへんお世話になりました。しかし、便利なAmazonにも販売委託手数料がけっこうかかる、顧客データが取りづらいなどいくつかのデメリットがあります。

そこで、思いました。「もう、ここまで来たからいっそ販売も自分たちでやればいいじゃん」と。
ということで、ネットショップを作ってしまいました。

つまり、「出版社」兼「本屋」です。
自社で本を制作し、お客さんに直接お届けします。

ずいぶん無茶をやっているようにも見えますが、実はけっこうメリットがあります。


  • 書店やAmazonでの販売のメリットは「店頭での販促」「ついで買い」などで知らない人にも認知してもらえることだが、うちはそもそもマーケティング会社なので、販促活動自体はネット広告などを活用して自力でできてしまう。
  • 自社販売では販売手数料がかからず、本の売上が全部入る。そのため、より多くの広告費を投入することができる。
  • 購入したお客さんと直接のやりとりができるので、一度買ってもらった後はメルマガ等で継続的に接触できるようになり、販促活動がよりやりやすくなる。

そう。自力で広告やマーケティングができれば、直販というスタイルには何の問題もないどころか、むしろこちらの方が有利なのです

これ、今風のかっこいいマーケティング用語で言うと「D2C」です。
D2Cは「Direct to Customer」の略で、メーカーなどの企業が中間流通業者を通さず、自社のECサイトを通じて製品を顧客に直接販売することを指します。

街の本屋が次々と姿を消す中で出版なんて斜陽産業だと思われる方もあるかもしれませんが、このD2C、直販のスタイルならコンテンツ力とマーケティングの方法次第でいくらでも可能性があるんじゃないかと思っています。

ぼくは本好きです。動画や電子書籍といったデジタルメディアは便利ですが、本というメディアには消えてほしくありません。そのためにできることを、自分なりに考えて実行していきたいと思っています。

そんなわけで、半ば勢いで漕ぎ出したばかりの出版事業ですが、楽しみながら出版社活動を続けられたらいいなと思っています。

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