「無料動画セミナー」が振り向かれづらくなってしまった本当の理由

今から10年以上前、「FREE」というマーケティング本が流行りました。

ぼくも昔読みました。まだマーケティングのマの字もなかった、ただのサラリーマンの頃です。この本の内容を一言でとても平たく言えば、「集客をしたければ、タダで試してもらえ」というものでした。

図書館で借りて一度読んだだけなので詳しくは忘れましたが、先着50名様に無料でバースデーケーキを作るケーキ屋さんの例などが紹介されていたと思います。(記憶違いだったらごめんなさい。ケーキだったかどうか自信ないです)

この「無料」という言葉、コピーライティングの世界でも読者に与えるインパクトが強い、最強の言葉と呼ばれています。
みんな「タダ」には弱いですよね。ぼくもそうです。

先に無料で価値を提供しようというのは、ぼくの本「超小冊子集客術」にも詳しく書きました。「FREE」が出て10年以上経ちますが、この無料戦略がとても有効な手段であることに変わりはありません。

ただ、「無料」の価値観が大きく変容したなと感じます。

10年で「無料」の価値観ははどう変わったのか?

簡単に言えば、ネット上のコンテンツはほんとにフリーになっちゃいましたよね。
ネットを見れば今やありとあらゆる知識が手に入ります。

特にここ数年で一番の進化をしたのはYouTubeです。
今やさまざまな専門的コンテンツがYouTubeにアップされています。大抵のことは学ぶことができるでしょう。

このような状況になってしまうと、相対的に苦しくなるものがあります。
それは「無料レポート」とか「無料動画セミナー」といった類のもの。

ネットを見ていると、「メールアドレス登録で無料のレポートが手に入ります」とか「無料の動画セミナーをご受講いただけます」みたいな広告をよく見かけます。

一度はこういうの、やってみたことありません?
その無料コンテンツを受けた人には、売り手側が本来提供したい高額な本商品のセールスが入る、という仕組みです。

YouTubeが今のように充実していなかった2017、8年頃までは、そんな価値のあるセミナーがネットで無料で見られると言うところにすごいインパクトを感じたものです。ぼくもむさぼるように動画セミナーを見ました(その結果、たくさんの教材を買うことになりました・笑)

しかし、今はYouTubeのコンテンツが充実した影響もあって、こうした集客のための無料デジタルコンテンツは、以前よりもだいぶ効き目が薄くなってきたように思います。

もちろん今でも、「これ見てみたい!」と思うような動画セミナーは稀にあります。ただ、全体的にはピンと来なくなってきてしまいました。実際、そのようなタイプの広告を出してみてもあまり反応がよくなくなっています。

こうした無料動画セミナーのご案内を目にした時、いち消費者として抱くであろう感情を分解して考えると、おそらくこうです。

「YouTubeにも似たような話は上がってるし、そっちを見たら別によくない?」

でも、ちょっと待ってください。
本当にそうなのでしょうか?

本当に「動画セミナーは価値がない」のか?

YouTubeでは、もはやあらゆる情報が集積されているように感じます。
でも、それは「表面上」の話です。

たとえば、ビジネス本の要約チャンネルが人気です。ぼくも時々見ます。すごくコンパクトに要点をまとめてくれている動画も多く、素晴らしいなと思います。

ただし、この動画を見ればその本の教えを全て学べる、というわけではありません(そもそもそんなことをしたら著作権侵害になってしまいます)。ほとんどの要約動画は、本の中でも特徴的で、聞こえや耳障りのいい部分だけが抜粋されて動画になります。そうでなければ視聴されませんからね。

また、さまざまな解説コンテンツも出ています(ぼくもちょっとだけやってます)。
しかし、やはりチャンネルの再生回数を伸ばそうと思ったら、内容がどうしても時事的なコンテンツや、人がより強い興味を抱きそうなコンテンツに流れやすい傾向があります。
その分自然と、根本的で、地味だけど大事な情報というのは見つけづらくなります。

往々にして、より根本的で大事な情報ほどパッと見では興味を引きづらいものです
マーケティングで言えば、目先の売上を上げるテクニックはみんな興味を抱いても、それがなぜ効果的なのかを説明する行動心理学的要因は、おそらくそんなに見られないでしょう。というか、実際にあまり見てもらえませんでした(笑)。

つまり、本当に大事な情報は、まだまだYouTube上に上がっていないか、または上がっていても見つけづらい可能性が高いのです。YouTubeはけっして万能ではありません。

きちんと作られたコンテンツの価値は変わらない。あとは伝え方の問題

なので、もしあなたが上記のような無料動画セミナー戦略を以前からやっていたとしたら、その動画自体は本当に価値のあるものだと思うのです。そうでなければあなたはビジネスを続けてこられていなかったはずです。

ただし、10年で受け手の動画に対する価値観が変わりました。
受け取り手のシンプルな意識の問題として、「無料の動画」というキーワードはもはや特別なものではなくなってしまったのです。

これまでは、ただ「無料」だというだけでコンテンツに人が集まりました。
極端なことを言えば、これまでがイージーゲームすぎたとも言えます。「無料の動画だ」というだけで「おぉ、すげー!」になったから。

今は、「無料」だけでは振り向かれないぐらい動画コンテンツが一般的になったから、そのコンテンツ自体の価値をきちんと伝える必要が生じた……ただ、それだけのことです。

それを成し遂げるためには、やはり言葉の力がとても重要です。相手に価値を正しく伝え、「見てみたい!」という行動を促すためのメッセージを丁寧に伝えなければいけません。

これからのWebマーケティングは、コンテンツだけでなく、言葉の力を磨くことがさらに重要になったな、と思うのでした。

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